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『骨肉腫治療薬』として期待されるがん免疫療法
 
 
アリゾナ州立大学 Dr. Joseph N Blattman らの研究チームでは、マウス骨肉腫モデルを使い骨肉腫に対するチェックポイント阻害剤免疫療法の有用性を検討してきています。

Dr. Joseph N Blattmanらは、抗PD-L1抗体がマウスに注入した骨肉腫細胞の増殖、骨肉腫形成を抑制することを示し、チェックポイント阻害剤免疫療法が骨肉腫治療に有用であることを示しています(J Immunother. 2015; 38(3):96-106.)。しかし、骨肉腫細胞注入後のマウスの生存日数は延長するに留まり、やがて死亡に至ることから、抗PD-L1抗体に対する薬剤耐性の獲得、または抗PD-L1抗体とは別な腫瘍免疫抑制機構が働く可能性を考えました。
Dr. Blattmanらは、抗PD-L1抗体投与後のマウスではCTLA-4の発現が増加することを突き止め、抗PD-L1抗体によってPD-1受容体を介する免疫抑制系が遮断された後、末梢性免疫で作用すると位置付けられているCTLA-4を介する骨肉腫形成を助ける免疫抑制機構が作働している可能性を示しました。このマウスにおけるエビデンスをもとに、抗PD-L1抗体に加え、抗CTLA-4抗体を組み合わせ投与して2つの異なる免疫抑制機構を阻害する戦略を企て、マウス生存日数が延長するだけでなく生存できるまでの相乗的治療効果が発現されることを示しました。抗CTLA-4抗体は、単独投与では抗腫瘍作用を示さない低用量であることから、2つのチェックポイント阻害剤投与が誘発する副作用は最小限に抑えられていると考えられます。さらにDr. Blattmanらのチームは、抗PD-L1抗体と抗CTLA-4抗体を投与したマウスでは、骨肉腫細胞増殖、腫瘍形成過程を助けることになる免疫抑制機構を阻害するだけに留まらず、骨肉腫細胞に対する免疫記憶細胞の生体機能も回復させ、抗PD-L1抗体と抗CTLA-4抗体を投与したマウスではさらに注入した骨肉腫細胞の成長を、マウスが持つ細胞障害性T-細胞の力によって死滅させることを証明しています。これらの機序によって肺転移も抑制できたと報告しています。
抗PD-L1抗体投与後のCTLA-4発現の変化 チェックポイント阻害剤の併用投与と生存率
骨肉腫腫瘍領域では免疫機能を抑制性に作働させるPD-L1が発現

PD-L1は腫瘍領域の細胞障害性T細胞(CD8+ T-細胞)に発現するPD-1に結合、刺激して、CD8+ T-細胞の免疫機能を抑制しています。従って、骨肉腫細胞はCD8+ T-細胞が関与する腫瘍免疫から逃れ、増殖、腫瘍微小環境を優位に形成していきます。 腫瘍細胞は、腫瘍領域に他の細胞を誘い出し、血管を作り、自身の増殖、成長環境(腫瘍微小環境と呼びます)形成を促す栄養を得ています。

イラストは、異物であるはずの癌(黒忍者)が生体内で発見されると、青ヘルのリンパ球に追い出されるはずが、骨肉腫細胞(黒忍者)によって、青ヘルによる自身への追い出し工作を阻止しようと、PD-L1と呼ばれる分子を道具に、青ヘルを無気力状態に陥れ、自身は分身の術で増え続けていく様子です。黒忍者はさらに分身の術が効率良く行えるよう、栄養供給路(イラストでは血管)を作ったりします(腫瘍微小環境形成と呼ばれます)。茶色のヘンテコな奴らは骨髄由来のリンパ球の一種で、黒忍者に動員されかけつけた黒忍者支援者です。

※これらの結果はマウス骨肉腫モデルで得られた結果です。
(文献:ImmunoTherapy of Cancer 2015, 3:21)
 
現在、免疫治療薬として大きく2種類、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体があります。以下、『かみ砕きすぎてもよく分かる?免疫治療薬の作用』の解説とさせて頂きます。
1.免疫細胞のつくられる所
2.腫瘍組織適合遺伝子複合体とは?
3.抗CTLA-4抗体の作用部位
4.腫瘍微小環境形成促進
5.抗PD-1抗体の作用部位
免疫細胞がつくられるところは、大きく2つに分類されます。
免疫細胞となるリンパ球が最初に分化(成長)するところは”一次リンパ組織”と呼び、骨髄胸腺は一次リンパ組織です。免疫細胞がさらに分化して免疫反応の準備が開始されるところを”二次リンパ組織”と呼び、リンパ節脾臓が二次リンパ組織です。

樹状細胞と呼ばれる細胞は白血球の一種で、骨髄中で分化し体内のあらゆる組織・器官に分布しています。末梢組織・器官では樹枝状の突起を伸展させた形態を特徴とします。樹状細胞は食作用をもち、異物を貪食、食した情報を細胞表面に表現させ、リンパ節に移動して免疫反応を開始させる、重要な役割を担っています。食した情報(抗原)を細胞表面に表現させることから、抗原提示細胞とも呼ばれます。食した情報の表現は、主要組織適合遺伝子複合体と呼ばれる分子にセットされ、細胞表面に提示されます。

 
《参考》チェックポイント阻害剤成人における承認・開発動向
一般名(開発番号) 開発企業 免疫学的分類 対象腫瘍
Ipilimumab ○ Bristol-Myers Squibb CTLA-4モノクローナル抗体 悪性黒色腫
Tremelimumab MedImmune/AstraZeneca 抗CTLA-4モノクローナル抗体 悪性中皮腫
Pembrolizumab Merck 抗PD-1モノクローナル抗体 進行性黒色腫、非小細胞肺癌
Nivolumab ○ Bristol-Myers Squibb 抗PD-1モノクローナル抗体 悪性黒色腫
Pidilizumab CureTech 抗PD-1モノクローナル抗体 悪性黒色腫
肺扁平上皮癌
AMP-224 Amplimmune
GlaxoSmithKline
PD-L2-IgG融合蛋白 転移性大腸がん
MPDL3280A Genentech/Roche 抗PD-L1モノクローナル抗体 進行性・転移性固形腫瘍、多発性骨髄腫、非小細胞肺癌
MEDI4736 MedImmune/AstraZeneca 抗PD-L1モノクローナル抗体 非小細胞肺癌、悪性中皮腫、進行性固形腫瘍
IMP321 Immutep 可溶化LAG-3-Ig融合蛋白 悪性乳癌、悪性腎癌
TRX518 GITR, Inc 抗GITRモノクローナル抗体 悪性黒色腫、固形腫瘍
  ○ 日本で既に承認
 
(2015年10月31日)
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