「詳細 日本のがん統計」小児がん版を世界に向け発信!
確かで効率の高い小児がん治療開発を目指し、日本の小児がん情報を世界で共有。日本語ページ、勿論、あります。
小児がん治療開発
免疫療法開発臨床試験の最前線
 
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、生体内に存在する特定のタンパク質と結合できるタンパク質です。多くのがん細胞では、健康な生体細胞が持たないタンパク質を過剰に発現していることが知られています。従って、がん細胞だけが発現するタンパク質を標的としたがん治療薬の開発が試みられてきました。がん細胞だけが発現するタンパク質が、がん細胞の成長や増殖を促しているとしたら、モノクローナル抗体をそのタンパク質に結合させることによって、がん細胞の生理機能を抑制できることが予想されます。こうした技術と予想に基づき開発されたのがハーセプチン(トラスツズマブ)です。ハーセプチンでは、乳がん細胞の増殖因子受容体(HER2)を標的として開発されました。モノクローナル抗体にはマウスから作成したマウスモノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体の一部をヒト由来のタンパク質に置き換えたヒト化マウス抗体、そして完全にヒト由来のタンパク質による完全ヒト化抗体があります。ハーセプチンはヒト化マウス抗体です。
小児がんにおいては、現在、GD2と呼ばれるタンパク質を標的としたモノクローナル抗体により治療開発が進められています。GD2はdisialoganglioside2の略称で、生体内では、神経細胞、表皮メラノサイト、末梢性知覚神経線維にその発現が限られています。神経芽腫やメラノーマなどの幾つかの悪性腫瘍細胞では高発現し、腫瘍細胞の分裂・増殖を誘発することが知られています。従って、GD2を標的とした抗GD2抗体が作られ小児がん治療薬への使用が試され、アメリカChildren’s Oncology Group(参加施設166)による臨床試験第3相ランダム化試験(COG ANBL0032 randomized phase 3 study)によって、高リスク神経芽腫患者における効果が既に確認されています(N Engl J Med. 2010; 363:1324-34)。抗GD2抗体は現在、神経芽腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、メラノーマ治療薬として開発中で、日本では、神経芽腫に対する臨床試験が開始されています。
 
表1.抗GD2モノクローナル抗体 海外で進行中の臨床試験

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キメラ抗原受容体
がん細胞は、生来ヒトが保持する免疫力によって排除されると考えられますが、近年、がん細胞自ら免疫力低下、免疫作用から回避することが示され、このメカニズムは腫瘍免疫応答回避機構と呼ばれています。この腫瘍免疫応答に強く拘わる重大な役割を演じる細胞は、細胞障害性T細胞(以下、T細胞と記します)と呼ばれる細胞です。がん細胞は、腫瘍免疫応答回避機構を獲得することによって、細胞障害性T細胞との接触から逃れ増殖していくことが知られてきています。キメラ抗原受容体は、腫瘍免疫応答回避機構を獲得したがん細胞にT細胞が接触できるよう、T細胞に人工的に導入させた受容体です。受容体には、がん細胞に特異的に発現するタンパク質に結合できる受容体分子、すなわちモノクローナル抗体として作用するタンパク質等が使われます。キメラ抗原受容体を有するT細胞は、免疫応答回避機構を獲得したがん細胞に接触し、がん細胞を攻撃、死滅させることが可能になると考えられ、ハーセプチンが無効のがん細胞において、HER2キメラ抗原受容体を導入させたT細胞による抗腫瘍効果が示されています(Mol Ther 17:1779-1787,2009)。
キメラ抗原受容体発現T細胞移入療法
がん患者の生体からT細胞を採取し、がん細胞を標的と出来るキメラ抗原受容体を発現、増殖させたT細胞を体内に戻す治療が開発されています。キメラ抗原受容体は、現在、第三世代と呼ばれるまでの改良が進んでいます。第一世代のキメラ抗原受容体では、本来、がん細胞を認識、結合するT細胞受容体のがん細胞の認識、結合部位にがん細胞特異的タンパク質を導入、第二、第三世代のキメラ抗原受容体は、T細胞をより強く活性化、補強することを目的に、共刺激分子と呼ばれるタンパク質をさらに導入させていますが、現在、第一世代と第二・第三世代とを比較した研究報告までには至っていません。
小児がんに対しては、白血病、悪性リンパ腫、神経芽腫、肉腫で試験が始まっています。神経芽腫を標的とするキメラ抗原受容体は、GD2を標的としたタンパク質が使われています。
 
表2.キメラ抗原受容体 海外で進行中の小児がん臨床試験

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