「ただいま!」と元気に「お家に帰りたい!」。誰もが毎日思うことだと思います。病気は薬で治る、入院なんてしたら病気は完治する、と誰もが思い願うことです。

薬は研究者が開発し、お医者さんは薬を使って治療をして、病気の人は薬を飲んで治療をうけます。それぞれが一生懸命に仕事をして、一日も早く病気が治るように頑張ります。しかし、それでも治らない病気もあります。

「小児がん」は、毎年およそ2000~3000人の子どもに発症します。正確な患者数はわかりませんが、1万~1万5千人の子どもは治療中と思われます。

小児死亡原因順位表
データソース:人口動態統計(厚生労働省大臣官房統計情報部)
年齢別死亡原因順位(2005年)

2005年の人口動態調査では、「小児がん」を死亡原因とする推定死亡数は子どもの人口10万人当たり100~150人くらいに当たり、推定死亡率 としては減少してきています。しかしながら、小児がんは依然小児の死亡原因、死亡率が高い疾病で、「悪性新生物」は小児の死亡原因の上位にランクされています。小児死亡原因順位表の上位3つの死亡原因のなかで、薬があれば治せるものは「悪性新生物」です。しかし残念ながら、飲めば100%「小児がん」を治せる治療薬はありません。予防薬などもありません。小児がんによる死亡率が減少している一方で、医学・医療技術が発展した昨今においても、小児がん発症機序が解明されていないことから、小児がん推定罹患率 に改善は認められないのが現状です。

小児がんを治療する小児がん治療薬の開発では、治験(臨床試験)によって安全性と有効性が認められることが、統計学的に確認されなければなりません。その為には、統計学的に何を目的としてどのように試験を実施するものであるのか明確に記述した手順書、いわゆる治験プロトコール(試験計画書)が作成されます。治験プロトコールの作成においては、どのくらいの確立で発生するのか予想される現象(試験目的)に対して、何パーセントの確かさ(精度)で安全性や有効性を判定するのか調査・検討の上、試験の結論を導くためには何人の被験者を要する試験となるのか、などをデザインしていきます。

小児がんは、小児に発生するがんの総称です。小児がん国際分類第3版 によると、小児がんは大きく12のがん種に分類され、これらの12のがん種はさらに詳細に47のがん種に分類されています。従って、小児がんのなかでも発生率の低いがんでは、本当に希な疾病となります。小児がんは小児の死亡原因第2位となる疾病でありながらも、総罹患数(患者数)が少ないことや、治験では被検者の安全性が確保できる投与基準を満たした患者が対象となることなどを理由に、治療効果が期待されている治験薬があっても投与できない、投与されても効果を判定する判定基準に到達できない、最悪の場合は目的とした治験を遂行できないことになります。少子高齢化社会 の発展に伴い、小児がん推定罹患数 は減少しており、今後、ますます小児がんの新薬開発が困難となることが予想されます。

飲めば必ず治すことができる!そんな「小児がん」治療薬が一日でも早く開発されて販売できるように、また近い将来「小児がん」は予防できるようになることを願います。
 

 

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